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第44話 魔法を求めて再びロンデールへ

Author: 黒蓬
last update Last Updated: 2025-04-04 06:00:46

「時間もあるし、とりあえず私の部屋に戻りましょ」

とミアが自分の部屋へ案内してくれた。

「改めて、皆ありがとうね。お蔭で私もお父様も無事で事態を解決することができたわ」

「上手くいったみたいで良かったよ」

「本当に。あの夜は気になってあまり眠れませんでした」

『ミアは少し危なかったけどね。兵士さんが駆けつけてくれて良かったわ』

ロシェの発言に俺とカサネさんは驚いた。ミアは少しばつが悪そうにしている。

俺達は二人からあの夜何があったのかを聞いた。

「攫われる一歩手前じゃないか。ロシェに頼んで正解だったな」

「えぇ。対策はしたつもりだったけど、あの人数は想定外だったわ」

「それにしてもミアも魔法が使えたんだな。この前の道中では見なかったけど」

「なるべく知られたくなかったからね。本当にいざという時以外は使わない様にしていたの」

そういうミアは少し申し訳なさそうにしていた。あの時のミアは依頼人みたいなものだったし、護衛も居たのだから彼女が謝る理由はないのだが。

「別に気にする必要はないさ。あの時ミアは護衛対象だったしな。それに予想通り大事なところでそれが役に立ったんだから正解だったわけだ」

「ありがとう。それにしても本当に何も褒美を貰わなくて良かったの?あんな計画を阻止した功労者なんだから、ある程度のことなら通ったと思うわよ?」

ミアは勿体ないという顔でこちらを見ていたが、二人とも特に欲しいものもなかったからあの回答で正解だろう。

「あぁ、俺は偶々あいつらの話を聞けただけで、襲撃時には何の役にも立ってなかったしな」

「私はついて行って話を聞いてたくらいでしたからなおさらですね」

「聞きそびれていたけど、ロシェは良かったか?もし何かあれば今からでも頼んでみるが」

『特にないわ。もしあるならあの時に言ったわよ』

「そうか。なら問題ないな」

俺達は納得したのだが、助けられた側のミアとしては何か納得しづらいようだ。

何かいい案はないかと首を捻っている。

「う~ん。じゃぁ私個人に対して

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    その後、最近の様子などをコヨネから聞いていると、入口の扉が開いた。「ただいま~っと、あれ?お客さんか?・・・あ!アキツグさんじゃないか。戻ってきたんだ!」 「コウタ、久しぶりだな。元気そうで何よりだ」 「そうなんだ。コヨネがすっかり元気になってさ!全部アキツグさんのおかげだよ!」コウタは俺に気づくと、嬉しそうに俺に礼を言ってきた。「いや、二人が頑張ったからだよ。俺はちょっと手伝っただけさ。でも、今コヨネちゃんにも言ったけど、完治できるかはこれからに掛かってるからな。油断せずにこれからも気を付けるんだぞ」 「うん。うん。アキツグさんの言いつけを守って頑張るよ。そうだ!聞いてくれよ。俺、工場で働かせて貰えるようになったんだ。まだまだ下働きだけど、親方も頑張ってるって褒めてくれてさ!」コウタも初めて会った頃と違ってすっかり明るくなったようだ。 約束通り盗みも止めていたし、働き口も見つかったようで安心した。 これなら、コヨネちゃんも良くなっていくだろう。「あぁ、コヨネちゃんからも聞いたよ。頑張ってるみたいだな。二人が元気になって俺も嬉しいよ」 「お兄ちゃん、気持ちは分かるけどカサネさんにもちゃんと挨拶して」コヨネちゃんがそう言うと、コウタはそこで初めてカサネが居たことに気づいたようで、慌てて謝った。「あ、ご、ごめんなさい。俺、コウタって言います。コヨネの兄です」 「初めましてコウタ君。私はカサネです。気にしなくても大丈夫ですよ。ふふっ、二人とも本当にアキツグさんのことが好きなんですね」楽しそうにカサネが笑った。 コウタが恥ずかしそうにしながらも返事をする。「アキツグさんは俺達の恩人だから。俺はアキツグさんに悪いことをしたのに、話を聞いて妹の治療までしてくれたんだ。いくら感謝してもし足りないくらいだよ」 「誰にだって魔がさすことはある。コウタの場合は妹のためって理由もあったしな。今はちゃんと反省して働いているんだし、そう気に病むことはないさ」 「ありがとう。もうあんなことはしないよ。約束したしな」

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    数日の旅路を越えて再びロンデールの街に戻ってきた。「思えばここからミアを連れて行ったんだよな。あの時はあんな大事に巻き込まれるなんて思いもしなかったけど」 「最後には王国の危機を救う手助けになっちゃいましたね」隣でカサネさんがくすくす笑っている。 笑いごとで済んで良かったよ。もし失敗してたら大惨事だったもんな。。「ハロルドさんにもあいさつに行かないとなぁ。とはいえ、まずは彼らの様子を見に行くか。カサネさんはどうする?」 「宜しければご一緒して良いですか?お話を聞いてたから私も妹さんのこと気になります」 「じゃ、一緒に行こうか。ロシェも・・・あっ!あ~ロシェは少し散歩でもしてきてくれるか?実はその子、喘息っていう病気でな。動物の毛とかで病状が悪化する可能性があるんだ」 『そういうことなら仕方ないわね。私はどこかで適当に休んでおくわ』 「悪いな」ということで、カサネさんと二人の家に向かうことになった。 コウタの家に到着し、扉をノックする。「は~い」中から女の子の声が返ってきた。コヨネちゃんのようだが随分元気そうだな。 少しすると扉を開けてコヨネが姿を見せた。「どちらさまで・・・あれ?もしかしてアキツグさん?アキツグさん!お久しぶりです。見て下さい、アキツグさんから頂いたお薬のおかげで私動けるようになりました!こ、こほっ」俺に気づいたコヨネちゃんが嬉しそうに現状を伝えてくれた。勢いが過ぎてまた咳が出てしまったようだが。「あぁ、元気そうで安心したよ。そんなに慌てなくても良いから。コウタは外出中か?」 「はい。お兄ちゃんはお仕事に行ってます。アキツグさんが旅に出たあと少しして、工場の下働きとして働かせて貰えるようになったんです。っと、すみません。もう一人いらしたんですね。初めまして、私コヨネっています」 「初めまして、私はカサネです。アキツグさんとはヒシナリ港で会ってね。それから同行させて貰っているんです」 「わぁ!ヒシナリ港って海があるところですよね?私見たことないんです。いいなぁ。あ、すみません

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第44話 魔法を求めて再びロンデールへ

    「時間もあるし、とりあえず私の部屋に戻りましょ」とミアが自分の部屋へ案内してくれた。「改めて、皆ありがとうね。お蔭で私もお父様も無事で事態を解決することができたわ」 「上手くいったみたいで良かったよ」 「本当に。あの夜は気になってあまり眠れませんでした」 『ミアは少し危なかったけどね。兵士さんが駆けつけてくれて良かったわ』ロシェの発言に俺とカサネさんは驚いた。ミアは少しばつが悪そうにしている。 俺達は二人からあの夜何があったのかを聞いた。「攫われる一歩手前じゃないか。ロシェに頼んで正解だったな」 「えぇ。対策はしたつもりだったけど、あの人数は想定外だったわ」 「それにしてもミアも魔法が使えたんだな。この前の道中では見なかったけど」 「なるべく知られたくなかったからね。本当にいざという時以外は使わない様にしていたの」そういうミアは少し申し訳なさそうにしていた。あの時のミアは依頼人みたいなものだったし、護衛も居たのだから彼女が謝る理由はないのだが。「別に気にする必要はないさ。あの時ミアは護衛対象だったしな。それに予想通り大事なところでそれが役に立ったんだから正解だったわけだ」 「ありがとう。それにしても本当に何も褒美を貰わなくて良かったの?あんな計画を阻止した功労者なんだから、ある程度のことなら通ったと思うわよ?」ミアは勿体ないという顔でこちらを見ていたが、二人とも特に欲しいものもなかったからあの回答で正解だろう。「あぁ、俺は偶々あいつらの話を聞けただけで、襲撃時には何の役にも立ってなかったしな」 「私はついて行って話を聞いてたくらいでしたからなおさらですね」 「聞きそびれていたけど、ロシェは良かったか?もし何かあれば今からでも頼んでみるが」 『特にないわ。もしあるならあの時に言ったわよ』 「そうか。なら問題ないな」俺達は納得したのだが、助けられた側のミアとしては何か納得しづらいようだ。 何かいい案はないかと首を捻っている。「う~ん。じゃぁ私個人に対して

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第43話 国王との謁見

    朝になって俺達が待ちきれずに王城へ向かおうとすると、そこにちょうど兵士の一人が伝言を伝えに来た。 どうやら国王の暗殺計画は失敗に終わり、ミア達も無事だったようだ。 それは良いのだが、何故か俺達が功労者として国王との謁見を許可されたという話まで一緒について来ていた。「えぇ、、どうする?これ」 「どうするも何も、私達に断る権利なんてないと思いますよ」困惑する俺に対して、カサネさんも同じように動揺しながらもどうしようもない事実を告げる。「そうだよな。国王様からの謁見の招待を断るなんて、よほどの理由がないと無理だよな・・・」ミアとは出会った状況が特殊だったから、その後もそれほど気負わず付き合えているが、いきなり国王と知ってる相手となると恐れ多さが出てきてしまう。「私も気持ちは分かりますが、あのミアさんのお父様なのですし少なくとも悪い方ではないと思いますよ」 「まぁ・・・そうかもな。それに功労者として呼ばれてるわけだし、変なことにはならないはずだよな。緊張はするけど」 「えぇ。礼儀に気を付けて言われたことに応えさえすれば大丈夫だと思います」カサネさんにそう言われて俺は気づく。「俺、この国の礼儀作法とか全然分からないぞ!?」 「そう言われると私も不安かも。商業ギルドで聞いてみましょうか」 「何で商業ギルドなんだ?」 「何となく冒険者ギルドよりは、礼儀が大事な気がしません?あと情報を聞くならギルドが一番無難かなと思ったんです」確かに。一番良いのは王城の人だろうが、昨日の騒動が収まっていない今言っても邪魔になるだけだろう。そういう意味ではギルドは正しい判断だと思う。「そうだな。商業ギルドで聞いてみるか」やるべきことが決まったところで早速商業ギルドに向かった。 流石に王都にあるギルドだけあって謁見の際の作法についても知っていた。 二人で少量の謝礼を払い簡単な講義を受けた。 幸いなことにそれほど難しい内容ではなかったので、これなら大丈夫だろう。 その後も衣装など、失礼にならない程度

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